児童相談所における相談動向

(1) 1980年代においては、約25万件で推移していた相談受付件数は、平成元年度から平成14年度まで増加し、平成14年度では約40万件であった。

(2) 不登校相談件数は、平成10年度以降の動向を見ると減少傾向にある。

(3) 非行相談件数は、平成10年度以降、非行の低年齢化により、大幅に増加している。

(4) 平成14年度に児童相談所が対応した虐待相談の処理件数は約2万4千件であるが、このうち、約半数は3歳未満の児童である。

 

問い

1.児童相談所における相談内容別受付件数はどのように推移しているか?HOW1

2.不登校相談件数はどのように推移しているか?HOW2

3.被虐待者の年齢別構成割合はどのようになっているか?HOW3

 

答え

1.児童相談所における相談内容別受付件数はどのように推移しているか?HOW1

資料:厚生省「社会福祉行政業務報告」

資料:厚生省「社会福祉行政業務報告」

 

2.虐待経路別相談件数はどのように推移しているか?HOW2

出所:『厚生省報告例』出所:平成12年度 児童相談所における児童虐待相談処理件数報告

出所:『厚生省報告例』

出所:平成12年度 児童相談所における児童虐待相談処理件数報告

 

3.主たる虐待者はどのように推移しているか?HOW3

出所:『平成14年度社会福祉行政業務報告の概要』

出所:『平成14年度社会福祉行政業務報告の概要』

 

4.児童虐待の防止等に関する法律とは何か?WHAT1

□児童に対する虐待の文言は、1933(昭和8)年の「児童虐待防止法」により初めて明記された。

□平成12年に制定されたこの法律において「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう)について行う次に掲げる行為をいい、それを防止することを促進するための法律。

①児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。

②児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。 

③児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。 

④児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力。その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

□法律では、児童虐待の早期発見・通告又は送致を受けた場合の措置・立入調査等・警察官の援助・親権の行使に関する配慮等について規定している。具体的には以下のとおり。

①児童虐待の早期発見

学校、児童福祉施設、病院その他児童の福祉に業務上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない。

②通告又は送致を受けた場合の措置

児童相談所が通告又は、送致を受けたときは、児童相談所長は、必要に応じ近隣住民、学校の教職員、児童福祉施設の職員その他の者の協力を得つつ、当該児童との面会その他の手段により当該児童の安全の確認を行うよう努めるとともに、必要に応じ一時保護を行うものとする。

③立入調査等

都道府県知事は、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、児童の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。この場合においては、その身分を証明する証票を携帯させなければならない。

④警察官の援助

児童相談所長は、送致を受けた児童の安全の確認又は一時保護を行おうとする場合において、これらの職務の執行に際し必要があると認めるときは、警察署長に対し援助を求めることができる。

⑤親権の行使に関する配慮等

児童の親権を行う者は、児童のしつけに際して、その適切な行使に配慮しなければならない。

 

5.立ち入り調査等を行う場合の留意点は何か?WHAT2

□都道府県知事は、児童虐待が行われているおそれがあると認めるときは、児童委員又は児童の福祉に関する事務に従事する職員をして、児童の住所又は居所に立ち入り、必要な調査又は質問をさせることができる。

□この場合においては、その身分を証明する証票を携帯させなければならない。

□「速やかに」とは原則として48時間以内をさす。

□児童の安全の確認、一時保護又は立入り及び調査若しくは質問をしようとする者は、これらの職務の執行に際し必要があると認めるときは、警察官の援助を求めることができる。

 

6.児童虐待を発見した場合の通告義務とは何か?WHAT3

□保護者のない児童又は保護者に監護させることが不適当であると認める児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。

□学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者は、児童虐待を発見しやすい立場にあることを自覚し、児童虐待の早期発見に努めなければならない。

□児童虐待を受けた児童を発見した者は、速やかに通告しなければならない。

 

7.処遇に至る流れは何か?WHAT4

□児童相談所が児童虐待を受けた児童について通告又は送致を受けたときは、児童相談所長は、速やかに、当該児童の安全の確認を行うよう努めるとともに、必要に応じ一時保護を行うものとする。

□調査や心理検査、医学的診察、一時保護中の行動観察結果を踏まえ、児童相談所は児童にとって最善の処遇を決定する。

□処遇には在宅指導と施設入所措置、里親委託などがある。

①在宅指導

・児童虐待を行った保護者について、親子分離をせず、在宅で家庭訪問や通所により児童福祉司などが親子関係の調整や家族指導、児童の心理療法などを行う措置が採られた場合においては、保護者は、児童福祉司の指導を受けなければならない。

・これらの業務を児童委員や児童家庭支援センターなどに委託する場合もある。

②施設入所措置、里親委託など

・著しい虐待のため、在宅での指導が困難なケースでは、児童を家庭からいったん分離して、親子関係の悪循環を解消し、児童の安全と成長を保障する必要がある児童の乳児院や児童養護施設など児童福祉施設への入所や、里親への委託の措置を行う。

・ただし、これらの措置は強制力がなく、親権者の意に反して行うことができない。

・家庭裁判所の承認を得て行う施設入所などの措置(いわゆる3号措置)とは、児童相談所長または施設の長は、児童虐待の防止および児童虐待を受けた児童の保護の観点から、当該児童虐待を行った保護者については「当該児童との面会または通信を制限する」ことができる。

 

8.親権喪失宣告の請求とは何か?WHAT5

□児童の親権者が、その親権を濫用し、又は著しく不行跡であるときは、民法834条の規定による親権喪失の宣告の請求は、同条に定める者のほか、児童相談所長も、これを行うことができる。

□父又は母が、親権を濫用し、又は著しく不行跡であるときは、家庭裁判所は、子の親族又は検察官の請求によって、その親権の喪失を宣告することができる。

□親権喪失宣告がなされるまで、親権者が子どもに対して生命や身体的に重大な危険がおよぶ虐待を行う可能性が高い場合は「親権者の職務執行停止及び職務代行者の選任の保全処分」の申し立てもできる。