憲法規範の特質

憲法の3大特質は、①自由の基礎法であり、②制限規範性があること及び、③最高規範性があるということである。

 自由の基礎法とは自由は立憲主義の根本的な目的であり価値である。

 なぜか。それは、憲法を作った目的が、国民が国家権力によって不当に制限されることなく、その自由が保障されるべきだという発想にあるからである。この自由はすべての国民は生まれながらに自由であるという自然権の思想(17世紀後半のジョンロックの思想)に基づく。

 それでは、この自由はどのように規定されているのか。

 この自然権に基づく自由を人権規定として実定化している(第11条~40条)。これは憲法の中核をなす部分である。

 そして、この人権規定が守られるように、国家の政治の在り方を規定している。統治機構という部分である。

 即ち人権部分の目的を全うするために、その手段として統治機構も規定することにより自由という価値を実現するように規定されている。そして、この自由の価値の、さらにその根本の価値が「人間の人格不可侵の原則」すなわち「個人の尊重」、「個人の尊厳」の原理である。これは、第13条で「すべて国民は個人として尊重される」と規定されている。従って、憲法第13条は、日本国憲法全103条のうち最重要な条文と考えてよい。

 憲法の制限規範性とは、憲法は一定の国家機関に権限を授ける授権規範でもある。しかし、憲法は権限を授けるところに、本質があるのではなく、あくまでも、濫用の危険性を伴った権力に歯止めをかけ、制限をしていくというところに、根本的な目的がある。たとえば、立法権は国会に(第41条)付与するが、司法権、行政権は国会に付与せず、裁判所、内閣に属させる(三権分立)ところに、その目的がある訳である。この憲法の制限規範という特質も、個人の尊重という価値観から導かれる。

 最高法規性とは、憲法が国法体系に於いて、その効力の点で最上位にあることをいう。なぜかというと、憲法が国民の自由を守るために、国家権力に制限をしていく法であるためには、すべての国家権力よりも上位にあって、すべての国家権力に歯止めをかけられる位置にいなければならないからである。

 形式的最高法規性とは、国の法体系の段階構造の中で憲法が最上位に位置付けられることをいう(第98条)。具体的にはどのような順序の段階構造をなしているかというと、憲法、法律、命令、処分という順序で段階構造をなしている。

 ・法律とは国会が定立する法規範である。

 ・命令とは行政府の定立する法規範である。

 ・政令とは各省庁が制定する。

 ・処分とは、行政や裁判所における一定の意思決定である。

 そして、上位の法は下位の法により具体化され、下位の法は上位の法から権限を授けられて、その有効性の根拠を持つという関係になっている。そして、憲法がこのように形式的に最高法規であるのは何故か。それは、憲法が個人の尊重を全うするための人権保障の体系だからである。即ち、憲法の内容が、人間の権利、自由をあらゆる国家権力から不可侵のものとして保障する人権規範を中心として構成されているからである。

 第97条は「この憲法が、日本国民に保障する基本的人権は人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と規定している(憲法の実質的最高法規性)。

違憲審査制とは、憲法に反する国家行為を裁判所が違憲と宣言することによって、その国家行為の効力を否定する制度である(憲法第81条)。なぜ必要かというと、このような違憲審査制が有効に機能することによって、憲法の最高法規性が確保され得るからである。

 

問い

  1. 憲法の3大特質は何か。WHAT1

     1-1.①自由の基礎法とは何か。WHAT2

     1-2.なぜ自由は立憲主義の根本的な目的であり価値であるのか。WHY1

     1-3.それでは、この自由はどのように規定されているのか。HOW1

    2.憲法の制限規範性とは何か。WHAT3

    3.最高法規性とは何か。WHAT4

     3-1.なぜ憲法が国法体系に於いて、その効力の点で最上位にあるのか。WHY2

    4.形式的最高法規性とは何か。WHAT5

     4-1.具体的にはどのような順序の段階構造をなしているか。HOW2

     4-2.憲法がこのように形式的に最高法規であるのは何故か。WHY3

    5.違憲審査制とは何か。WHAT6

    5-1.なぜ違憲審査制は必要か。WHY4

 

答え

1.憲法の3大特質は何か。WHAT1

①自由の基礎法であり、②制限規範性があること及び③最高規範性があるということである。

1-1.①自由の基礎法とは何か。WHAT2

 自由は立憲主義の根本的な目的であり価値である。

1-2.なぜ自由は立憲主義の根本的な目的であり価値であるのか。WHY1

 それは、憲法を作った目的が、国民が国家権力によって不当に制限されることなく、その自由が保障されるべきだという発想にあるからである。この自由はすべての国民は生まれながらに自由であるという自然権の思想(17世紀後半のジョンロックの思想)に基づく。

1-3.それでは、この自由はどのように規定されているのか。HOW1

この自然権に基づく自由を人権規定として実定化している(第11条~40条)。これは憲法の中核をなす部分である。そして、この人権規定が守られるように、国家の政治の在り方を規定している。統治機構という部分である。即ち人権部分の目的を全うするために、その手段として統治機構も規定することにより自由という価値を実現するように規定されている。そして、この自由の価値の、さらにその根本の価値が「人間の人格不可侵の原則」すなわち「個人の尊重」「個人の尊厳」の原理である。これは、第13条で「すべて国民は個人として尊重される」と規定されている。従って、憲法第13条は、日本国憲法全103条のうち最重要な条文と考えてよい。

 

2.憲法の制限規範性とは何か。WHAT3

憲法は一定の国家機関に権限を授ける授権規範でもある。しかし、憲法は権限を授けるところに、本質があるのではなく、あくまでも、濫用の危険性を伴った権力に歯止めをかけ、制限をしていくというところに、根本的な目的がある。たとえば、立法権は国会に(第41条)付与するが、司法権、行政権は国会に付与せず、裁判所、内閣に属させる(三権分立)ところに、その目的がある訳である。この憲法の制限規範という特質も、個人の尊重という価値観から導かれる。

 

3.最高法規性とは何か。WHAT4

憲法が国法体系に於いて、その効力の点で最上位にあることをいう。

3-1.なぜ憲法が国法体系に於いて、その効力の点で最上位にあるのか。WHY2

 それは、憲法が国民の自由を守るために、国家権力に制限をしていく法であるためには、すべての国家権力よりも上位にあって、すべての国家権力に歯止めをかけられる位置にいなければならないからである。

 

4.形式的最高法規性とは何か。WHAT5

国の法体系の段階構造の中で憲法が最上位に位置付けられることをいう(第98条)。

4-1.具体的にはどのような順序の段階構造をなしているか。HOW2

 具体的には、憲法、法律、命令、処分という順序で段階構造をなしている。法律とは国会が定立する法規範である。命令とは行政府の定立する法規範である。政令とは各省庁が制定する。処分とは、行政や裁判所における一定の意思決定である。そして、上位の法は下位の法により具体化され、下位の法は上位の法から権限を授けられて、その有効性の根拠を持つという関係になっている。

4-2.憲法がこのように形式的に最高法規であるのは何故か。WHY3

 それは、憲法が個人の尊重を全うするための人権保障の体系だからである。即ち、憲法の内容が、人間の権利、自由をあらゆる国家権力から不可侵のものとして保障する人権規範を中心として構成されているからである。

第97条は「この憲法が、日本国民に保障する基本的人権は人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と規定している(憲法の実質的最高法規性)。

 

5.違憲審査制とは何か。WHAT6

憲法に反する国家行為を裁判所が違憲と宣言することによって、その国家行為の効力を否定する制度である(憲法第81条)。

5-1.なぜ違憲審査制は必要か。WHY4

 このような違憲審査製が有効に機能することによって、憲法の最高法規性が確保され得るからである。