社会福祉士と法
社会福祉士とは、社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている。職務内容の対象は身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある人達である。目的は専門的知識及び技術をもつて、その人達の福祉に関する相談に応じることであり、助言、指導その他の援助を行うことである。社会福祉士が、福祉事務を遂行する福祉の現場においては、たえず事件が発生し、それと共に法律問題が浮上する。ここに社会福祉士は法と関わるのである。具体例をあげれば、民事関係については①精神障害者に生活保護開始の必要性を感じ資産調査中、本人が他人に騙されて借金を重ねていた(借金約300万円)場合。このまま、生活保護を開始し、保護費を支給しても、借金の返済にまわさざるを得ない。これでは、生活保護の目的である最低限度の生活を維持することも達せられない。いかなる助言をなすべきか。②通勤寮から社会福祉法人に通っていた知的障害者が一人暮らしを始めるにあたり、寮の近くにアパートを借りるに際し従来、寮長が保証人にならざるを得なかった。寮長に個人的負担を負わせることでよいのか、といった問題である。また刑事関係では①福祉関係の作業所に通っている知的障害者が、刑事事件の犯人として逮捕された。被疑者が、自分自身で、不当な捜査から身を守ったり,誤って起訴されたり処罰されないように自己に有利な証拠を収集することは、弁護人がいなければ著しく困難なことである。まして知的障害者においては尚更のことである。憲法は適正な刑事手続き(第31条)を保障するために被疑者に弁護人選任権(第34条)を保障している。しかし、起訴された後の被告人とは異なり、捜査段階の被疑者には憲法上も、刑事訴訟法上も、国選弁護人の制度がない。このため、資力や知識の乏しい被疑者が弁護人を選任できないことが往々にしてある。増して知的障害者においては、尚更のことである。このような場合いかなる援助をなすことができるか。といった問題がおこる。更に、社会法関係については①児童扶養手当の制度は、母子家庭の児童の「健やかな成長」に寄与するものである。児童扶養手当の支給を受けるには、受給者である母が都道府県知事に申請し、支給資格認定を受けなければならない(児童福祉法6条第1項)。認定申請をすれば、その翌月から手当ての支給が開始される(同法第7条第が、申請をしなければ、事実上、児童福祉手当は支給されない。又、遅れて申請をしても、子供の生まれた日まで遡って支給されないので、支給申請が遅れると過ぎた期間の児童扶養手当は受給できない。即ち、認定申請が遅れた場合、子供の出生時から申請時までの期間の手当を受給できないということである。申請行為を援助すべき立場にある者の心すべき事柄であろう。といった問題にいきあたる。そこで社会福祉士になにゆえ法の知識が必要なのか。人間が家族・社会・国家の一員として生きていくためには、個人と個人の関係や国家と個人の関係を定めたルールが必要である。このようなルールには、習俗、宗教、道徳、そして、法、などがある。法は習俗、宗教、道徳などのルールとは次ぎの点で異なる。それは、裁判のよりどころとなるルールであるという点である。この意味での法はさまざまな形で存在している。この法の存在形式のことを法源とよんでいる。法源には、憲法・条約・法律・命令・条例・規則・慣習法・判例・条理・契約などの自治規範などを挙げることができる。
一方、社会福祉士は身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある人達に対して専門的知識及び技術をもつて、その人達の福祉に関する相談に応じることであり、助言、指導その他の援助を行うことを職務内容とする。これらの対象者には判断能力の不十分な人も多くさまざまな場面(財産面・身体・精神面・福祉サービス面)で権利侵害をうけやすい。これらの人々の権利擁護を実効性のあるものとするために法の基礎的知識は不可欠なのである。社会福祉士に必要な法知識の概要の1つは現代におけるさまざまな法が、人権の保障を究極の目的として、憲法を頂点とした体系を形づくっている。この法体系の概要を知ることである。すなわち、憲法は国法体系に於いて、その効力の点で最上位にある。このことを憲法の最高法規性という。それは、憲法が国民の自由を守るために、国家権力に制限をしていく法であるためには、すべての国家権力よりも上位にあって、すべての国家権力に歯止めをかけられる位置にいなければならないからである(憲法の実質的最高法規性)。このことを第97条で「この憲法が、日本国民に保障する基本的人権は人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と規定して示している。そして.国法体系の段階構造の中で憲法が最上位に位置付けられることを形式的最高法規性いう。「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部または一部は、その効力を有しない。日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする(第98条)。」とし、その形式的最高法規性を示している。具体的には、憲法、法律、命令、処分という順序で段階構造をなしている。法律とは国会が定立する法規範である。
命令とは行政府の定立する法規範である。政令とは各省庁が制定する。
処分とは、行政や裁判所における一定の意思決定である。そして、上位の法は下位の法により具体化され、下位の法は上位の法から権限を授けられて、その有効性の根拠を持つという関係になっている。憲法がこのように形式的に最高法規である理由は、憲法が個人の尊重を全うするための人権保障の体系だからである。即ち、憲法の内容が、人間の権利、自由をあらゆる国家権力から不可侵のものとして保障する人権規範を中心として構成されているからである。
参考資料:
現代社会福祉辞典(有斐閣2003年)、社会福祉用語辞典(3訂)中央法規
社会福祉士養成講座(中央法規)、精神保健福祉士養成講座(中央法規)、「憲法」芦部信喜
WEB5W1H資料
問い
社会福祉士と法との関係は何か。WHAT1
社会福祉士に法の知識が必要な理由は何か。WHY1
社会福祉士に必要な法知識の概要にはどのようなものがあるか。HOW1
解答
1.社会福祉士と法との関係は何か。WHAT1
社会福祉士とは、社会福祉士及び介護福祉士法に規定されている。
職務内容:
対象は- 身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある人達である。
目的は- 専門的知識及び技術をもつて、その人達の福祉に関する相談に応じることであり、助言、指導その他の援助を行うことである。
社会福祉士が、福祉事務を遂行する福祉の現場においては、たえず事件が発生し、それと共に法律問題が浮上する。ここに社会福祉士は法と関わる。
(例):
民事関係- ①精神障害者に生活保護開始の必要性を感じ資産調査中、本人が他人に騙されて借金を重ねていた(借金約300万円)場合。このまま、生活保護を開始し、保護費を支給しても、借金の返済にまわさざるを得ない。これでは、生活保護の目的である最低限度の生活を維持することも達せられない。いかなる助言をなすべきか。
②通勤寮から社会福祉法人に通っていた知的障害者が一人暮らしを始めるにあたり、寮の近くにアパートを借りるに際し従来、寮長が保証人にならざるを得なかった。寮長に個人的負担を負わせることでよいのか
刑事関係- ①福祉関係の作業所に通っている知的障害者が、刑事事件の犯人として逮捕された。被疑者が、自分自身で、不当な捜査から身を守ったり,誤って起訴されたり処罰されないように自己に有利な証拠を収集することは、弁護人がいなければ著しく困難なことである。まして知的障害者においては尚更のことである。憲法は適正な刑事手続き(第31条)を保障するために被疑者に弁護人選任権(第34条)を保障している。しかし、起訴された後の被告人とは異なり、捜査段階の被疑者には憲法上も、刑事訴訟法上も、国選弁護人の制度がない。このため、資力や知識の乏しい被疑者が弁護人を選任できないことが往々にしてある。増して知的障害者においては、尚更のことである。このような場合いかなる援助をなすことができるか。
社会法関係- ①児童扶養手当の制度は、母子家庭の児童の「健やかな成長」に寄与するものである。児童扶養手当の支給を受けるには、受給者である母が都道府県知事に申請し、支給資格認定を受けなければならない(児童福祉法6条第1項)。認定申請をすれば、その翌月から手当ての支給が開始される(同法第7条第1項)が、申請をしなければ、事実上、児童福祉手当は支給されない。又、遅れて申請をしても、子供の生まれた日まで遡って支給されないので、支給申請が遅れると過ぎた期間の児童扶養手当は受給できない。即ち、認定申請が遅れた場合、子供の出生時から申請時までの期間の手当を受給できないということである。申請行為を援助すべき立場にある者の心すべき事柄であろう。
2.社会福祉士に法の知識が必要な理由は何か。WHY1
人間が家族・社会・国家の一員として生きていくためには、個人と個人の関係や国家と個人の関係を定めたルールが必要である。このようなルールには、習俗、宗教、道徳、そして、法、などがある。法は習俗、宗教、道徳などのルールとは次ぎの点で異なる。それは、裁判のよりどころとなるルールであるという点である。この意味での法はさまざまな形で存在している。この法の存在形式のことを法源とよんでいる。法源には、憲法・条約・法律・命令・条例・規則・慣習法・判例・条理・契約などの自治規範などを挙げることができる。
一方、社会福祉士は身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある人達に対して専門的知識及び技術をもつて、その人達の福祉に関する相談に応じることであり、助言、指導その他の援助を行うことを職務内容とする。これらの対象者には判断能力の不十分な人も多くさまざまな場面(財産面・身体・精神面・福祉サービス面)で権利侵害をうけやすい。
これらの人々の権利擁護を実効性のあるものとするために法の基礎的知識は不可欠なのである。
3.社会福祉士に必要な法知識の概要にはどのようなものがあるか。HOW1
社会福祉士に必要な法知識の概要にはどのようなものがあるか。HOW 1
現代におけるさまざまな法が、人権の保障を究極の目的として、憲法を頂点とした体系を形づくっている。この法体系の概要を知ることである。すなわち、憲法は国法体系に於いて、その効力の点で最上位にある。このことを憲法の最高法規性という。それは、憲法が国民の自由を守るために、国家権力に制限をしていく法であるためには、すべての国家権力よりも上位にあって、すべての国家権力に歯止めをかけられる位置にいなければならないからである(憲法の実質的最高法規性)。このことを第97条で「この憲法が、日本国民に保障する基本的人権は人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は過去幾多の試練に堪え、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである」と規定して示している。
そして.国法体系の段階構造の中で憲法が最上位に位置付けられることを形式的最高法規性いう。「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部または一部は、その効力を有しない。日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする(第98条)。」とし、その形式的最高法規性を示している。
具体的には、憲法、法律、命令、処分という順序で段階構造をなしている。
法律とは国会が定立する法規範である。
命令とは行政府の定立する法規範である。
政令とは各省庁が制定する。
処分とは、行政や裁判所における一定の意思決定である。
そして、上位の法は下位の法により具体化され、下位の法は上位の法から権限を授けられて、その有効性の根拠を持つという関係になっている。
憲法がこのように形式的に最高法規である理由は、憲法が個人の尊重を全うするための人権保障の体系だからである。即ち、憲法の内容が、人間の権利、自由をあらゆる国家権力から不可侵のものとして保障する人権規範を中心として構成されているからである。