生活保護法の4原理
生活保護の目的は、生活保護法第一条において「第1条 この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」と記されている。
目的に見られるように、生活保護は、憲法第25条に記された生存権の保障するものであるという点で重要である。憲法第25条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定められており、国による生存権の保障が掲げられている。この理念を具現化するものの一つとして昭和25年に生活保護法が制定された。
生活保護には、4つの原理があるとされる。国家責任による最低生活保障の原理、無差別平等の原理、最低生活保障の原理、保護の補足性の原理である。国家責任による最低生活保障の原理を含まずに、3つの原理とされる場合もある。
国家責任による最低生活保障の原理は、生活保護法第1条を根拠としてり、生活に困窮している国民に対しての最低生活保障を国の責任において、行うことである。
無差別平等の原理は生活保護法第2条を根拠としている。生活保護法第2条では「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる」とされており、これは、性別や信条、社会的身分などによる、差別や優先的な対応を否定するものである。また、この原理により、困窮に至った原因にかかわらず保護を受けることができる。旧生活保護法においては、素行不良のものや、勤労を怠っているものは、保護の対象とならなかった。
最低生活保障の原理は、生活保護法第3条に規定されるものである。第3条では、「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」とされている。憲法第25条の定める生存権の保障という目的を有した制度であるため、保障される生活水準もまた、憲法25条で保障されている水準となる。
保護の補足性の原理は、生活保護法第4条に規定されている。「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。2 民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」とされ、この要件を確認するためにミーンズテスト(資力調査)が行われる。
生活保護法による保護の実施要領では、生活保護法における資産とは、土地(宅地、田畑、山林及び原野)、家屋、事業用品、生活用品とされている。保護を受けるにあたっては、これらの資産を全て活用することが前提とされる。活用とは、本来の利用目的にそっての活用と、売却し、その代金を生活費に当てるという意味での活用がある。したがって、居住用の自宅(資産価値が著しく高い場合を除く)などは保有が認められている。また、車なども原則保有しないことが原則であるが、事業に必要な場合、障害を持っている場合、山間部に住んでいる場合などは保有を認められることがある。
能力の活用とは、具体的には、稼働能力を指しており、稼働能力を有していて、就労先もあるにもかかわらず、就労しない場合は、能力を活用した、とは言えず、保護の対象とはならない。
また、扶養義務者とは民法第877条「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる」という規定に基づいており、これらのものの扶養の履行を持ってもなお困窮している場合でなければ保護の対象とはならない。
他の法律に定める扶助とは、身体障害者福祉法、児童福祉法、知的障害者福祉法、障害者自立支援法、老人福祉法、老人保健法、介護保険法など、計40の法律に定める扶助を指す。たとえば、介護保険での給付は、生活保護における介護扶助に優先される。
参考資料:
現代社会福祉辞典(有斐閣2003年)、社会福祉用語辞典(3訂)中央法規
社会福祉士養成講座(中央法規)、精神保健福祉士養成講座(中央法規)、
WEB5W1H資料
問い
1.生活保護の目的とは何か。WHAT1
2.生活保護はなぜ重要なのか。WHY1
3.生活保護の4つの原理とはどのようなものか。HOW1
答え
1.生活保護の目的とは何か。WHAT1
生活保護の目的は、生活保護法第一条において「第1条 この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」と記されている。
2.生活保護はなぜ重要なのか。WHY1
憲法第25条に記された生存権の保障のため。憲法第25条では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。2 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定められており、国による生存権の保障が掲げられている。この理念を具現化するものの一つとして昭和25年に生活保護法が制定された。
3.生活保護の4つの原理とはどのようなものか。HOW1
国家責任による最低生活保障の原理、無差別平等の原理、最低生活保障の原理、保護の補足性の原理。国家責任による最低生活保障の原理を含まずに、3つの原理とされる場合もある。
国家責任による最低生活保障の原理は、生活保護法第1条を根拠としてり、生活に困窮している国民に対しての最低生活保障を国の責任において、行うことである。
無差別平等の原理は生活保護法第2条を根拠としている。生活保護法第2条では「すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる」とされており、これは、性別や信条、社会的身分などによる、差別や優先的な対応を否定するものである。また、この原理により、困窮に至った原因にかかわらず保護を受けることができる。旧生活保護法においては、素行不良のものや、勤労を怠っているものは、保護の対象とならなかった。
最低生活保障の原理は、生活保護法第3条に規定されるものである。第3条では、「この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない」とされている。憲法第25条の定める生存権の保障という目的を有した制度であるため、保障される生活水準もまた、憲法25条で保障されている水準となる。
保護の補足性の原理は、生活保護法第4条に規定されている。「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。2 民法(明治29年法律第89号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする」とされ、この要件を確認するためにミーンズテスト(資力調査)が行われる。
生活保護法による保護の実施要領では、生活保護法における資産とは、土地(宅地、田畑、山林及び原野)、家屋、事業用品、生活用品とされている。保護を受けるにあたっては、これらの資産を全て活用することが前提とされる。活用とは、本来の利用目的にそっての活用と、売却し、その代金を生活費に当てるという意味での活用がある。したがって、居住用の自宅(資産価値が著しく高い場合を除く)などは保有が認められている。また、車なども原則保有しないことが原則であるが、事業に必要な場合、障害を持っている場合、山間部に住んでいる場合などは保有を認められることがある。
能力の活用とは、具体的には、稼働能力を指しており、稼働能力を有していて、就労先もあるにもかかわらず、就労しない場合は、能力を活用した、とは言えず、保護の対象とはならない。
また、扶養義務者とは民法第877条「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる」という規定に基づいており、これらのものの扶養の履行を持ってもなお困窮している場合でなければ保護の対象とはならない。
他の法律に定める扶助とは、身体障害者福祉法、児童福祉法、知的障害者福祉法、障害者自立支援法、老人福祉法、老人保健法、介護保険法など、計40の法律に定める扶助を指す。たとえば、介護保険での給付は、生活保護における介護扶助に優先される。