心理学とは

 心理学とは人の心の動きや行動を科学的に明らかにしようとする学問である。言い換えれば、心や行動について誰もが共通に理解できる形で、つまり客観的に捉えようとするものである。

 人の心は直接捉えることができないために、私たちは置かれた環境やその人の行動などから心を推測している。しかしそこには私たちが持つ知識や体験が大きく影響するがために、誤って推測してしまうことが多い。また私たちが体験していないことについては、他者の心を推測ができないこともある。そこで、人はどのような時にどのような心をもちやすいのかを学ぶことで、他者の心あるいは自分の心をよりよく推測することにつながる。

 福祉領域ではさまざまな人と関わり、援助していくことが求められる。しかし、末期患者を援助する際に末期患者の特性を理解しているかしていないか、被害者支援において被害者の心を理解しているかしていないかでは、援助者の対応もまったく異なってくるだろう。また適切な援助でなければ逆効果になることは言うまでもない。加えて、援助者が救済者願望を抱いて他者を援助する場合、適切な援助ができなくなることが極めて多く、援助者自身が自分の心の動きとその意味について考えることが求められる。従って、福祉においては被援助者の心および援助者自身の心を理解することが必要不可欠なのである。

 本来心理学は哲学として存在しており、霊魂やアニミズムといった用語で人の心が表されてきた。しかしあくまでも主観的なものであり、他の科学系の学問のような客観的に捉えることはできていなかった。そこで、フェフィナー(Fechner, G. T.)は心を客観的に捉えようと試み、感覚の強さを客観的に示した。そして、1879年にヴント(Wundt, W.)がライプチヒ大学に心理学実験室を設立した、この1879年がひとつの学問として哲学から心理学が独立した年といわれている。

 ヴントは人の心を理解するために内観という手法を採用した。内観とは、自分の思考、知覚、感情などを観察し表現することをいう。ヴントの考えを受け継いだティチェナー(Tichener, E. B.)は、精神を細かく分けて捉えるという要素主義・構成主義を提案した。

 しかしこのヴントらの考え方に対して反論する立場が出現する。ひとつはワトソン(Watson, J. B.)による行動主義的心理学の立場である。ヴントは内観で意識を扱うことで心を理解できるとしたが、ワトソンは意識が曖昧であり信頼できないことを指摘した。そして心に直接言及せず、客観的に観察できる行動を扱うべきであるとする考えを提案した。この考えは学習理論に大きく生かされている。

 また、ゲシュタルト心理学の立場が現れる。ゲシュタルトとは「全体」という意味であるが、この立場は心的現象が要素で分けて捉えられるわけではなく、全体を重要視しなければならない、意識に直接与えられた知覚的全体そのものを扱うべきという考え方に依拠する。この考え方を提唱する研究者として、ヴェルトハイマー(Wertheimer, M.)やコフカ(Koffka, K.)などが挙げられる。

 行動主義心理学は心理学の主流となった時期もあったが、行動だけではなく、物事の捉え方や推理、思考といった心的過程そのものを扱うべきという考えが1900年代末期に出てきた。この立場の領域を認知心理学という。特にコンピュータの発達によって、心をコンピュータの情報処理装置に当てはめ考察することが可能となった。

 さらに21世紀に入り、文化心理学やポジティブ心理学という新しい領域も現れた。文化心理学とは、異なる文化がそれぞれの世界に住む個人の心的過程や行動にどのような影響を及ぼすかを捉えようとする領域である。またポジティブ心理学とは、人の肯定的な部分に焦点を当て、その心的過程を理解しようとする領域をいう。抑うつや絶望感といった否定的な側面が従来扱われてきたが、楽観主義、幸福感といった肯定的な領域を検討することによって、成長や精神的健康に影響する要因や過程を捉えようとしている。

 

問い

  1. 心理学とは何か。WHAT1

  2. なぜ心理学を学ぶ必要があるのか。WHY1

  3. 心理学はどのように福祉に関係しているか。HOW1

  4. 心理学はいつ誕生したか。WHEN1

  5. 心理学が成立する前に、心を客観的に捉えようと試みた学者は誰か。WHO1

  6. 行動主義心理学とは何か。WHAT2

  7. ゲシュタルト心理学とは何か。WHAT3

  8. 認知心理学とは何か。WHAT4

  9. 文化心理学とは何か。WHAT5

  10. ポジティブ心理学とは何か。WHAT6

 

答え

1.心理学とは何か。WHAT1

 心理学とは人の心の動きや行動を科学的に明らかにしようとする学問である。言い換えれば、心や行動について誰もが共通に理解できる形で、つまり客観的に捉えようとするものである。

 

2.なぜ心理学を学ぶ必要があるか。WHY1

人の心は直接捉えることができないために、私たちは置かれた環境やその人の行動などから心を推測している。しかしそこには私たちが持つ知識や体験が大きく影響するがために、誤って推測してしまうことが多い。また私たちが体験していないことについては、他者の心を推測ができないこともある。そこで、人はどのような時にどのような心をもちやすいのかを学ぶことで、他者の心あるいは自分の心をよりよく推測することにつながる。

 

3.心理学はどのように福祉に関係しているか。HOW1

 福祉領域ではさまざまな人と関わり、援助していくことが求められる。しかし、末期患者を援助する際に末期患者の特性を理解しているかしていないか、被害者支援において被害者の心を理解しているかしていないかでは、援助者の対応もまったく異なってくるだろう。また適切な援助でなければ逆効果になることは言うまでもない。加えて、援助者が救済者願望を抱いて他者を援助する場合、適切な援助ができなくなることが極めて多く、援助者自身が自分の心の動きとその意味について考えることが求められる。従って、福祉においては被援助者の心および援助者自身の心を理解することが必要不可欠なのである。

 

4.心理学はいつ誕生したか。WHEN1

本来心理学は哲学として存在していたが、ヴント(Wundt, W.)が心理学実験室をライプチヒ大学に設立した1879年が、心理学がひとつの学問として哲学から独立した時といわれている。

 

5.心理学が成立する前に、心を客観的に捉えようと試みた学者は誰か。WHO1

 フェフィナー(Fechner, G. T.)。感覚の強さを客観的に示した。

 

6.行動主義心理学とは何か。WHAT2

 ワトソン(Watson, J. B.)による。ヴントは内観で意識を扱うことで心を理解できるとしたが、ワトソンは意識が曖昧であり信頼できないことを指摘した。心に直接言及せず、客観的に観察できる行動を扱うべきであるとする考えを行動主義心理学という。

 

7.ゲシュタルト心理学とは何か。WHAT3

 ヴントの考えを受け継いだティチェナー(Tichener, E. B.)は、精神を細かく分けて捉えるという要素主義・構成主義を提案した。しかし、心的現象は要素で分けて捉えられるわけではなく、全体を重要視しなければならないという考えが出てきた。その意識に直接与えられた知覚的全体そのものを扱うべきという考え方に依拠した領域をゲシュタルト心理学という。ヴェルトハイマー(Wertheimer, M.)やコフカ(Koffka, K.)などが挙げられる。

 

8.認知心理学とは何か。WHAT4

 行動主義心理学は心理学の主流となった時期もあったが、行動だけではなく、物事の捉え方や推理、思考といった心的過程そのものを扱うべきという考えが出てきた。この立場の領域を認知心理学という。特にコンピュータの発達によって、心をコンピュータの情報処理装置に当てはめ考察することが可能となった。

 

9.文化心理学とは何か。WHAT5

 異なる文化が、それぞれの世界に住む個人の心的過程や行動にどのような影響を及ぼすかを捉えようとする領域である。

 

10.ポジティブ心理学とは何か。WHAT6

 人の肯定的な部分に焦点を当て、その心的過程を理解しようとする領域。抑うつや絶望感といった否定的な側面が従来扱われてきたが、楽観主義、幸福感といった肯定的な領域を検討することによって、成長や精神的健康に影響する要因や過程を捉えようとしている。